女性部下を奴隷にしたサディスト女性の告白 第二信
告白 沙耶香(仮名)
束縛への渇望
私は欲張りな、そして満たされない人間なのだと思います。
美果子と愛人契約を交わし、自分の所有物としたはずなのに、彼女と離れているときなどはとても不安になり、彼女がいなくなってしまうのではないか、自分を裏切っているのではないかと考えてしまうのです。だからこそ会った時には彼女を激しく求めます。彼女は愛人である以前に私の部下でもあります。仕事中は部下としての仕事を忠実にこなします。仕事で使うラインやメールも、
「わかりました」「ありがとうございます」と無機的な、仕事の言葉でしかない文面でやり取りをします。デートの誘いもそうです。
「水曜日、仕事終わってからいつもの中華料理屋いかがですか?」と私。
「承知しました」と美果子。
そうやって食事をしてからホテルで性行為におよぶのです。そういうことをしてくれる時の彼女は激しいし、愛の言葉も言ってはくれます。だからこそ普段の冷淡な感じがもどかしくて仕方ないのです。
美果子の気持ちもわかります。仕事中に妙に仲が良かったりイチャイチャしていたらふたりの関係が怪しまれます。周囲に知られてしまっては元も子もないのです。だから普段は大人しく、ということは常識の範囲内だというのも理解できるのです。ですが私の本能はとろけるような時間をもっと長く過ごしたいと思っているのです。
ラインやメールの文面なんて個人的なものでもいいじゃない、と思う時もあるのですが彼女は慎重なのでしょう。だからこそふたりの時に私は激しく求めますし、彼女も応じてくれます。
それでいいとは思うのですが納得できない気持ちが確実にあって、だから美果子に「愛してる」と書かせたり言わせたりしているのです。自分と彼女との関係に自信がないからそれを確認するために強い言葉を求めてしまっているのです。
ホテルで一通りのプレイを終えてから彼女に聞きました。
「会社とかだとそっけないよね?」
「……それはそうでしょう。みんなの目もあるし」
「ラインの文章も事務的で」
「誰かに見られる可能性があるじゃないですか」
想像通りの答えでした。普通に考えて彼女に理があるのです。
「……それに紗耶香さんは結婚されているじゃないですか」
そうです。私には夫がいます。ふたりの関係が知られてリスクがあるのは美果子より私の方なのです。
「……うん、そうだね」
私は美果子に対して何だか申し訳ない気持ちになってその日は別れました。ひとり暮らしの美果子は翌朝までホテルに泊まって。私は夫のいる自宅へ。家にまで繋がる地下鉄の車内。酔客が数人いるそこでひとりで考えていました。
「自分は一時の気分で彼女に無理なことをやらせよう、いわせようとしていたのかもしれない」
電車の向かいの席で若いカップルが双方酒に酔った状態でベタベタしています。私は美果子とああいうことはできない。私が結婚しているから。そう考えると自分の不自由さ、――それは自業自得なのですが、そのことばかり考えてしまいます。自己分析に過ぎないのですが私は自分の気持ちよさを優先するあまり相手の都合や気持ちを考えない傾向があるのかもしれません。
家に帰るとすでにパジャマに着替えた夫がリビングでテレビを見ていました。
「おかえり。いつも大変だね」
夫は私が美果子と会っているのを残業だと信じ込んでいます。テレビのなかで芸人が道化を演じています。夫はそれ以上に何も知らずに私に裏切られているのです。これ以上の道化が、嘲笑される存在があるでしょうか。夫をそんな風にしてしまって本当に申し訳ないと思いました。同時に美果子も。ふたりの人間を同時に愛しているというのは私のうぬ惚れで、結果としてふたりとも傷つけているのだと悟りました。
夫への懺悔と告白
申し訳ない気持ちはあるものの、私はそれからも美果子を求め続けました。彼女もそこは応じてくれました。私の奇妙な性的嗜好。女性にのみサディスティックな気持ちになるという感情の受け皿として美果子は本当に素晴らしいものでした。大きいお尻を触ったり叩いたり、そこの奥の穴に指や器具を入れてみたり。そのたびに美果子は悲鳴にも嬌声にも聞こえる声をあげます。
美果子の身体はこんなにも気持ちいい。これは夫では絶対に味わえないもの。これを手放すことなんてできない。美果子のお尻の穴はスポーツをやっていただけあって締りがよく、指を入れるとキュウキュウと絡みついてくるよう。彼女の体温、筋肉、存在を感じているときは嫌なことも忘れられて、私は自分が生きていることを肯定できる。しかしいま、彼女とこういう関係を続けることが私にとっての「嫌な現実」として悩みの種になっている。
美果子のことを夫に話そうと思いました。すべては私の気持ちの問題でしかないのですが、この秘密を抱えてこの関係を続けていくことは不可能でした。
「ねえ、美果子さん。私ね、私たちのこと夫に話そうと思っているの」
「どうして……」
美果子は絶句しました。
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