告白 K男爵 (PN)
まなみとの邂逅
私は今、実の母娘である女ふたりと、SMでいうところの主従関係にあります。主人と奴隷という、絶対的な関係です。
どのようにして、そのような関係に至ったのか。今思えば、きっかけは「偶然の再会」でした。しかし、私は運命論者ではありませんが、「偶然」の姿で形をあらわした事でも、後々考えてみると、「必然」としか思えない出来事があります。二年前のあの出会いもそうでした。前置きが長くなるかもしれませんが、皆様に御報告させてください。
あの日、商用の相手(私は不動産関係の仕事をしております)が急に体調を崩したとのことで、ひとり大手チェーンの喫茶店で待ちぼうけをくらった私は、店内に入ってきた一人の女性を見たとき、思わず昔の記憶が甦るのを覚えました。
かれこれ十五年ほど前の記憶です。それでも、彼女は、「まなみに違いない」と、一瞬でわかりました。
もう四十を半ばくらいの年齢になっているはずでしたが、人目見て、「まなみに違いない」と確信したのです。
その時の私の反応は、今考えると、どうしてあのような行動をとったのか、ふだん冷静な私にしては不可解なのですが、思わず席を立ち上がった私は、彼女が着いた席に歩み寄っていたのでした。
「まなみさんじゃないか。お久しぶりです」
私は挨拶していました。
彼女は、不意をつかれ、跳ねあがるようにこちらを見上げたようでした。
長い髪を片方でまとめ、化粧のうすい小奇麗な顔は、やはり、十五年前のまなみの面影を強く残していました。
正面からお互いに見つめあうと、すこし潤んだような瞳が、グッと開いたような気がしました。私は、
(あぁ、おなじだ……)
と感慨深いものが湧き上がり、
「あ、あの……」
すこし動揺するように言葉を選ぼうとするまなみに、
「懐かしいなぁ。……十五年ぶりぐらいじゃないですか」
と気安く畳み掛けていました。彼女はピンクにルージュをひいた唇を開いたまま、とまどったように、否定も肯定もしません。そのうち、頬に赤みがさしてきたのがわかりました。
しかし、潤んだような瞳がせわしなく前方に泳ぎだしたため、迂闊な事ですが、そこではじめて、彼女には、連れがいることを認識したのでした。
まなみの席の前には、二十歳くらいの女性が座っていました。あっけにとられたように私をマジマジと見つめていました。なにか恐ろしいものを見るかのような顔つきで、私を見つめていたのです。
その顔があまりに十五年前のまなみに似ていたため、すぐに察知しました。
なんともいえない空気が流れました。後先も考えずに声をかけたため、どう収拾をつけたものかノープランの私はしばらく押し黙ってしまったのですが、するとまなみが、
「お久しぶりです、××さん」
と言って、そのあと言葉をゆっくり区切りながら、
「あ、優子ね、こちらは十年くらい前に、私が職場でお世話になっていた方なの」
事務的な口調で言いました。
「娘の優子です」
「はじめまして……」
怪訝な表情のまま、優子といわれた女性は、私への強い視線を決して離そうとせず、会釈してきたことを、今でもはっきり覚えています。
続きはマニア倶楽部3月号をご覧下さい。
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