真性淫乱マゾの人妻を手に入れた男性の告白
告白 赤沼志津馬(仮名)
薬剤師の裏の顔
宏美との出会いは街中の薬店だった。私が客、彼女が薬店の店員、正確には接客してくれた薬剤師としてである。
日頃の不摂生と病院嫌いの合わせ技で風邪をこじらせ、発熱の最中での訪問だった。
宏美は熱で朦朧としている私を心配し、親身になって私の症状に効くであろう薬を選んでくれたのだが、私は彼女の気遣いやサービス精神など受け取れる状態ではなかった。
発熱で心的な余裕を失っており、ありがたい気遣いも余計なお世話にしか感じられず、私の病態を丁寧に質問してくる四十路前後の地味な薬剤師が、仕事のデキないダメ店員に見えてくるほどだった。
どこかドン臭く、要領の悪い薬剤師だったのは事実だ。優しさはあるのだが、その優しさがクドくて一刻も早く薬を購入して帰りたかった。実際、そんな感じに薬を買って退散した。
後で思い返すと、肉体的ダメージから心的な余裕がなかったことで、彼女にかなり冷淡な応対をしていたことに気付いた。熱が下がり、頭にのぼってきたのは彼女への罪悪感だ。
もし彼女が美麗で客あしらいも上手な良く出来た薬剤師だったら、そんな感情は抱かなかったかもしれない。
大手のチェーン店ではなく、街中の小さな薬店で働く地味で不器用な熟女薬剤師……。
彼女への好奇心も手伝い、感謝と謝罪の意を伝えるつもりで再び薬店を訪問した。
健康な状態で向き合うと、冷静に彼女を値踏みすることが出来て、今度は発熱時には絶対に抱かないだろう感情がこみ上げてくるのに気付いた。
彼女の男慣れしていない雰囲気が、私の悪しき感情を刺激した。つまりはS本能である。
丁寧な対応に感謝の意を伝えつつ、セクハラまがいの言葉を会話にさしこんだ。
「あのときは発熱で朦朧としていたから、ちょっと冷たい感じの受け答えになって、申し訳ないと思ってたんですよ」
「いえいえ、わかります、具合がお悪いときは、誰でもそうなりますから」
「なのに優しく丁寧に接してくれて、それであなたのことが印象に残っていたんです」
言葉のニュアンスと目に、女性として見ている意を込めて見つめると、彼女はとたんに狼狽えた感じで目線を泳がせた。
S性を触発された私は「とても優しいから客の男性から勘違いされて、誘われたりするでしょ?」と薄く赤味がさした顔を覗き込んだ。
「ま、まさか……、私みたいなオバサン、相手にする人なんていませんよ。これでも、一応は既婚者ですから……」
「そうですか? 僕には魅力的な女性に見えるけどなあ。旦那さんがいても、そこは関係ないけど、男的には。誘われたこととか、一度もないんですか?」
「ありませんよ、ほんとに、一度もないです……」
「でも、そういうこと、一度くらいシテみたいって気持ちはあるでしょ?」
「いえ、そんな怖いこと……」
やや強めの口調で、赤味を帯びた頬を伏せるので、
「あれ、なんか勘違いしてませんか、僕が言ってるのはそういった直接的なことじゃなく、客の男とお食事とか、飲みとか、そういったことですよ」
と返したら、ユデダコのように真っ赤な顔になって狼狽える。これが私の本能をより刺激した。
タブーの年齢を聞き、「ずっと若く見える」「白衣の女性ってセクシーですね」などと、ちょっと下品なくらい堂々と押してみたら、それこそウブな小娘のようにモジモジしながら「そんなこと言われたの初めてです」と消え入りそうな声で答える。
そんな彼女の反応から発熱時には気付かなかった彼女のM性に気づいた。献身的に親身にあれこれ薬を選び、症状を詳しく質問してきたのも、男に尽くしたいという強い従属的な性格から来ているものだと……。
頭をもたげてきた私の嗜虐欲は止まらなかった。
「じゃあ、お食事だけなら、問題はないですよね。お礼をさせてください」
困りますと繰り返すが、誘われることに慣れていない彼女は、躊躇い照れているだけで、その表情も口調からも、私への嫌悪感や拒否感は感じられない。
白衣のネームプレートの下の名前の「宏美(仮名)」を見て「宏美さん」と繰り返し名前を呼びながら、誘った。小さな薬店のカウンター越しに、私は強引なナンパよろしく、お礼ですから、と食い下がり、ついには彼女の首を縦に振らせることに成功した。
そして勤務時間終わりに薬店を訪れ、タクシーに乗せて行きつけのイタリアンレストランに招待した。普段は外食もあまりしないそうで、宏美にしてみればすべてが非日常だったようだ。
そもそも、夫以外の男と2人きりで食事をするのも、結婚後初めてだと打ち明けた。
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食事中もいろいろ質問をした。男慣れしていない善良な宏美は、恥ずかしがりながらも正直に答えてくれた。ワインの酔いも手伝ってか、いくらか打ち解けた雰囲気にもなり、私も踏み込んだ質問ができた。
ご主人とは見合い結婚。三十後半まで独身だった宏美が、藁にもすがる思いで駆け込んだ結婚相談所でだったという。
「結婚を考えられる恋人はいなかったの?」
「ぜんぜん、私モテないし、男性に積極的になれない性格だったから……」
「じゃあ、交際人数とかは?」
ワインの酔いがプラスした赤い頬で、交際経験ゼロのまま今のご主人と結婚したと自白した。
つまり、処女のまま今の旦那と結婚。旦那も童貞で、処女と童貞同士の結婚だったという。3年前に結婚し、未だに子供はいない。ご主人は子供がいなければいないでかまわないと言っているそうだ。
夫婦の営みに関して質問すると、「あまり求められていないみたい……」と悲しそうにこぼした。話を聞いた感じでは、どうもご主人は世間体を気にして、ただ結婚することが目的で宏美という女性を選んだのではないかと失礼ながら私は思った。
夜の営みに関してしつこく質問したら、「最初の1年だけで、ここ2年はほとんど求められなくて……」とレス状態を告白。
「それじゃあ不満でしょ」と同情半分セクハラ半分で「オナニーとかするの?」と身を乗り出した。宏美は「いやだ……」と小娘のように目を伏せたが、私は許さなかった。
「べつに不自然なことじゃないよ、いや、僕だってこの歳でもやるよ」
「えっ、ほんとですかっ?」
「これは本能だからね、女性がシテても驚かないよ。宏美さんだってシテるでしょ?」
私が冗談めかして薄笑いで彼女を見つめると、つられたように照れ臭そうな微笑を浮かべ、こっくりと頷いた。
「週何回ペース? 僕は体力がバリバリのときは、毎日でもやっちゃうクチだけどねっ」
宏美は必死に誤魔化していたが、私が半ば強引に、
「僕も言ったんだから、宏美さんも言わなきゃダメだよ」
と答えさせたところ、
「私も似たような感じです……」
「じゃあ毎日とか?」
「主人が求めてくれないから」
と瞳を潤ませて答えた。
地味で堅物な印象とは裏腹に、彼女の本性は違っていた。
強い性欲を持った隠れ淫乱とでもいうのか、私が彼女から感じ取ったマゾ性は、妄想でも早とちりでもなかったのだ。
ここまでぶちっゃけトークを許してくれれば、もう承諾を得たも同然だろう。そもそも食事という免罪符が付いた誘いでも既婚女性がそれに乗った時点で、何らかの甘い期待が心の奥に潜んでいたに違いないのだから。
この続きは、マニア倶楽部2024年3月号をご覧ください。